なぜ食品添加物が使われるのかを考えてみましょう。
食品添加物と一口に言っても、いろいろな種類があり、それぞれに役割があります。
ここでは、食品添加物全般について、定義や分類、表示する時のルールを解説し、
微生物が増えるのを防ぐ役割を持つ代表的な食品添加物を紹介します。
ここでは、食品添加物全般について、定義や分類、表示する時のルールを解説し、
微生物が増えるのを防ぐ役割を持つ代表的な食品添加物を紹介します。
食品添加物とは
食品添加物の歴史
人類はずっと昔から、食品保存のために化学物質を利用してきました。私たちの祖先は、酢に漬けたり、煙でいぶしたりすることで食品が日持ちすることを発見しました。
例えば紀元前6千年頃、古代エジプトでは岩塩を食品保存のために使っていました。岩塩には塩漬けにした肉の色を良くし、風味を増して、食中毒を予防する働きがあることが既に知られていました。これは岩塩中に含まれている硝酸が亜硝酸に変わることで生じる作用であり、現在ハム・ソーセージに亜硝酸塩が使われているのと同じ理由です。
このように人類は昔から食品を保存、加工するためにさまざまな化学物質を使ってきたのです。
例えば紀元前6千年頃、古代エジプトでは岩塩を食品保存のために使っていました。岩塩には塩漬けにした肉の色を良くし、風味を増して、食中毒を予防する働きがあることが既に知られていました。これは岩塩中に含まれている硝酸が亜硝酸に変わることで生じる作用であり、現在ハム・ソーセージに亜硝酸塩が使われているのと同じ理由です。
このように人類は昔から食品を保存、加工するためにさまざまな化学物質を使ってきたのです。
日本での食品添加物制度の流れ
このように科学や法規制が発達するずっと以前から食品添加物は使用されてきたため、過去においては安全性に問題のあるものが使用されたり、品質をごまかす目的で使用されたりといったことがありました。
こうした事態を防ぐために、日本では食品衛生法(1947年公布)により、指定された食品添加物しか使用してはならないという制度(ポジティブリスト制度)が世界に先駆けて導入されました。
その後の更なる科学や法規制の発展によって、食品添加物の安全性や規制手法は見直されてきました。その過程で、使用禁止になった食品添加物もあります。こういった過去の積み重ねがあり、現在ではより安全な食品添加物だけが使われています。
こうした事態を防ぐために、日本では食品衛生法(1947年公布)により、指定された食品添加物しか使用してはならないという制度(ポジティブリスト制度)が世界に先駆けて導入されました。
その後の更なる科学や法規制の発展によって、食品添加物の安全性や規制手法は見直されてきました。その過程で、使用禁止になった食品添加物もあります。こういった過去の積み重ねがあり、現在ではより安全な食品添加物だけが使われています。
食品衛生法による定義
食品衛生法では、食品の製造に使うことができるのは、食品か食品添加物であり、食品添加物は内閣総理大臣が定めたものしか使ってはいけない、と決められています。
食品の定義(食品衛生法第4条)
この法律で食品とは、全ての飲食物をいう。ただし、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 (昭和三十五年法律第百四十五号)に規定する医薬品、医薬部外品及び再生医療等製品は、これを含まない。
食品添加物の定義(食品衛生法第4条の2)
この法律で食品添加物とは、食品の製造の過程において又は食品の加工若しくは保存の目的で、食品に添加、混和、浸潤その他の方法によって使用する物をいう。
食品添加物の指定制度(食品衛生法第12条)
人の健康を損なうおそれのない場合として内閣総理大臣が食品衛生基準審議会の意見を聴いて定める場合を除いては、食品添加物(天然香料及び一般に食品として飲食に供されている物であって食品添加物として使用されるものを除く。)並びにこれを含む製剤及び食品は、これを販売し、又は販売の用に供するために、製造し、輸入し、加工し、使用し、貯蔵し、若しくは陳列してはならない。
食品衛生法による分類
食品衛生法により、使用して良いものとしてリスト化されている食品添加物は2種類あります。安全性と有効性が確認されて内閣総理大臣より指定されている指定添加物と、1995年以前より使用されている、いわゆる天然添加物である既存添加物です。加えて、天然香料、一般飲食物添加物が例示されています。
食品添加物の種類
- 指定添加物
- 天然、合成に関わらず、安全性と有効性が確認されて内閣総理大臣により指定されているもの。
食品衛生法施行規則別表第一に収載されています。 - 例)L-アスコルビン酸、キシリトール、ソルビン酸 など
- 既存添加物
- 1995年以前はいわゆる“天然添加物”は指定の対象外でした。1995年以前から使われてきた、いわゆる天然添加物のうち、長年の使用実績のあるものとして、内閣総理大臣より経過措置的に使用が認められているものが既存添加物です。厚生省告示の既存添加物名簿に収載されています。
現在、既存添加物は357品目あります。これらについては、安全性の確認が進められており、 295品目は安全性の評価が完了、60品目は早急に検討を行う必要がないとされていますので、残り2品目となっています。 - 例)キトサン、トレハロース、ステビア、しらこたん白 など
- 品目数が減っているのはなぜ?
- 既存添加物は1995年には489品目ありましたが、132品目が消除され現在の357品目に至っています。2003年の食品衛生法改正において、安全性に問題があると判明した、又は既に使用実態のないことが判明した既存添加物については、既存添加物名簿からその名称が削除できることになりました。これまでに削除されたもののほとんどは使用実態のないことによりますが、アカネ科の植物の根から得られる色素であるアカネ色素は、ラットで発がん性が疑われたことから、2004年に消除されました。
- 天然香料
- 動植物から得られるもので、食品の着香の目的で使われるもの。消費者庁次長通知の天然香料基原物質リストにその基原物質が例として示されています。
- 例)バニラ、バラ、ローレル など
- 一般飲食物添加物
- 一般に食品として飲食されているもので食品添加物として使用されるもの。
消費者庁次長通知の一般に食品として飲食に供されているものであって食品添加物として使用される品目リストに、品名や基原・製法・本質等が例示されています。 - 例)エタノール、オレンジ果汁、パプリカ粉末 など
食品添加物はどうやって決められているの?
指定添加物については、下図のように内閣府の食品安全委員会が安全性を科学的に評価し、消費者庁での審議を経て、最終的には内閣総理大臣の認可により決定されます。
役割や種類
役割による分類
食品添加物として許可されるには、安全であることはもちろん、有用性も認められないといけません。
ここでは、その有用性(役割)によって分類しました。
ここでは、その有用性(役割)によって分類しました。
①食品の安全を守る
食品の安全を守る代表的な食品添加物には、微生物による腐敗・変敗や食中毒のリスクを減らす保存料や惣菜など保存期間の短い食品の日持ちを延長する日持向上剤、酸化による有害物質の生成や変色などを抑える酸化防止剤などが挙げられます。
②食品の嗜好性を向上させる
食品の嗜好性を向上させる代表的な食品添加物には、味や香りを良くする甘味料や酸味料、調味料、香料などや、食感を良くする安定剤、増粘剤など、色を良くする着色料、発色剤などが挙げられます。
③食品の製造・加工時に必要
豆腐を固める凝固剤、中華めん特有の食感・風味などをつくるかんすいのように、食品添加物がないとつくることができない食品があります。また、流通過程における食品の劣化を防ぐものもあります。
④栄養価の補填・強化
ビタミン、ミネラル、アミノ酸類などが挙げられます。
食の安全を守る食品添加物
ここでは、食品中の微生物が増えるのを防ぐ食品添加物のうち代表的なものについて紹介します。
ソルビン酸
ソルビン酸は世界で最も用いられている保存料です。
カビや酵母、細菌に幅広く効果があります。特に、カビや酵母は他の食品添加物では対応が難しく、ソルビン酸が広く使われる理由の一つです。
ソルビン酸は水に溶けにくいため、ソルビン酸カリウム(ソルビン酸K)が用いられることもあります。ソルビン酸カリウムの効果はソルビン酸よりもやや劣るため、どちらを使うかはケースバイケースです。
ソルビン酸は化学合成により製造されています。通常、未加工の食品には含まれていませんが、クラウドベリーの果実中に含まれているという報告もあります。
ソルビン酸は、脂肪を構成する成分である脂肪酸の一種です。体内では、他の脂肪酸と同様に代謝され、二酸化炭素と水にまで分解されると考えられています。
カビや酵母、細菌に幅広く効果があります。特に、カビや酵母は他の食品添加物では対応が難しく、ソルビン酸が広く使われる理由の一つです。
ソルビン酸は水に溶けにくいため、ソルビン酸カリウム(ソルビン酸K)が用いられることもあります。ソルビン酸カリウムの効果はソルビン酸よりもやや劣るため、どちらを使うかはケースバイケースです。
ソルビン酸は化学合成により製造されています。通常、未加工の食品には含まれていませんが、クラウドベリーの果実中に含まれているという報告もあります。
ソルビン酸は、脂肪を構成する成分である脂肪酸の一種です。体内では、他の脂肪酸と同様に代謝され、二酸化炭素と水にまで分解されると考えられています。
しらこたん白
しらこたん白はニシンやサケの白子から抽出されるたん白質で、日本で独自に開発された保存料です。1987年に鹿児島大学と当社との共同研究により実用化されました。日本の他に韓国でも使用することができます。
ソルビン酸は酸性でしか効果がありませんが、しらこたん白は中性~アルカリ性で効果が高くなります。また、耐熱性菌(加熱に強い菌)の増殖を抑えることができます。
白子には長年の食経験があり、しらこたん白自体も安全性が確認されています。しらこたん白は、小腸でアミノ酸にまで分解され吸収されると考えられています(アミノ酸は通常の食品に含まれるたん白質の構成成分です)。
食品への表示は、しらこたん白抽出物、しらこたん白、しらこ分解物、プロタミン、核たん白、しらこのいずれかが用いられます。
ソルビン酸は酸性でしか効果がありませんが、しらこたん白は中性~アルカリ性で効果が高くなります。また、耐熱性菌(加熱に強い菌)の増殖を抑えることができます。
白子には長年の食経験があり、しらこたん白自体も安全性が確認されています。しらこたん白は、小腸でアミノ酸にまで分解され吸収されると考えられています(アミノ酸は通常の食品に含まれるたん白質の構成成分です)。
食品への表示は、しらこたん白抽出物、しらこたん白、しらこ分解物、プロタミン、核たん白、しらこのいずれかが用いられます。
- 関連資料
安息香酸ナトリウム
安息香酸ナトリウムは、カビや酵母に効果があり、清涼飲料水等で使われる保存料です。
安息香酸は化学的な合成法により製造されています。自然界には広く分布しており、かんきつ類、バナナ、リンゴ、ナシ等の果実やチーズ、醤油等に含まれていると報告されています。安息香酸は水に溶けにくいため、安息香酸ナトリウムがよく用いられています。
米国等では比較的幅広い食品への使用が許可されていますが、わが国ではキャビア、マーガリン、清涼飲料水、シロップ、醤油、菓子の製造に用いる果実ペーストに限られています。
安息香酸は化学的な合成法により製造されています。自然界には広く分布しており、かんきつ類、バナナ、リンゴ、ナシ等の果実やチーズ、醤油等に含まれていると報告されています。安息香酸は水に溶けにくいため、安息香酸ナトリウムがよく用いられています。
米国等では比較的幅広い食品への使用が許可されていますが、わが国ではキャビア、マーガリン、清涼飲料水、シロップ、醤油、菓子の製造に用いる果実ペーストに限られています。
プロピオン酸カルシウム
パンは酵母を利用して作られます。プロピオン酸カルシウムはパン酵母への効果が弱く、カビ等には有効なので、パン等によく使われる保存料です。 プロピオン酸カルシウムは、同じく保存料であるプロピオン酸をカルシウム塩にしたものです。プロピオン酸は化学的に合成されていますが、味噌、醤油、チーズ等にもともと含まれる香気成分でもあります。また、私たちの体内で腸内細菌によって産生されることも知られています。
グリシン
グリシンは保存料ではありませんが、耐熱性菌(加熱に強い菌)の生育を抑える効果があるため日持向上剤としてよく使われます。
グリシンはアミノ酸の一種で、私たちの体を構成するたん白質の原料でもありますが、食品添加物として使われるのは化学的に合成されたものです。エビ、カニなどの魚介類のうま味成分としても知られており、調味料として利用されることもあります。
グリシンは対象食品を制限されていませんので、幅広い食品で利用されています。
グリシンはアミノ酸の一種で、私たちの体を構成するたん白質の原料でもありますが、食品添加物として使われるのは化学的に合成されたものです。エビ、カニなどの魚介類のうま味成分としても知られており、調味料として利用されることもあります。
グリシンは対象食品を制限されていませんので、幅広い食品で利用されています。
- 関連資料
酢酸ナトリウム
酢酸ナトリウムは保存料ではありませんが、幅広い細菌類の生育を抑える効果があります。対象食品の制限もなく、日持向上剤として最もよく使われる食品添加物です。
酢酸ナトリウムは、日持向上剤としてのほか、pH調整剤や調味料、酸味料としても利用されています。法令により、このように複数の機能を持つ食品添加物については、主な使用目的に従って表示することになっています。日持向上剤としての利用であれば物質名のみ、pH調整剤や調味料、酸味料としての利用であればこれらの名称(一括名といいます)で表示されます。
酢酸ナトリウムの原料である酢酸は、食酢の主成分としてよく知られています。食酢は醗酵法あるいは合成法で作られますが、食品添加物としての酢酸は高純度を要するため化学的に合成されています。
日持向上剤の効果は全般的に保存料より低いために、添加量は保存料より多くなる傾向があります。しかし、保存料には使用制限のあるものが多いために使えない場合や、保存料はイメージが悪いとされているために保存料表示を避けたい場合などに、酢酸ナトリウムのような日持向上剤が利用されます。
酢酸ナトリウムは、日持向上剤としてのほか、pH調整剤や調味料、酸味料としても利用されています。法令により、このように複数の機能を持つ食品添加物については、主な使用目的に従って表示することになっています。日持向上剤としての利用であれば物質名のみ、pH調整剤や調味料、酸味料としての利用であればこれらの名称(一括名といいます)で表示されます。
酢酸ナトリウムの原料である酢酸は、食酢の主成分としてよく知られています。食酢は醗酵法あるいは合成法で作られますが、食品添加物としての酢酸は高純度を要するため化学的に合成されています。
日持向上剤の効果は全般的に保存料より低いために、添加量は保存料より多くなる傾向があります。しかし、保存料には使用制限のあるものが多いために使えない場合や、保存料はイメージが悪いとされているために保存料表示を避けたい場合などに、酢酸ナトリウムのような日持向上剤が利用されます。
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