2011年12月2日、弊社のタイ現地法人Ueno Fine Chemicals Industry (Thailand), Ltd.(以下、ウエノタイと省略)の主催によりUENO Food Safety Seminarを開催いたしましたので報告いたします。
日時 : 2011年(平成23年)12月2日 会場 : The Westin Hotel Grande Sukhumvit Bangkok 主催 : Ueno Fine Chemicals Industry (Thailand), Ltd. |
ウエノタイでは、2008年に第1回食の安全国際フォーラムを開催して以来、タイの食品企業様を主な対象として、毎年食の安全をテーマとした講演会を開催しています。
タイの食品企業様は日本の食品製造・流通技術に高い関心があります。そこで今回は、日本における食品流通と食の安全に関する技術を紹介するフードセーフティセミナーとして開催しました。日本から一色賢司教授(北海道大学大学院水産科学研究院)をお招きし、ウィラシット准教授(カセサート大学農産業学部)にコーディネーターを務めていただきました。また、技術講習については、ウエノタイ・古川陽二郎が務めました。
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「Hurdle technology for protecting foods in Japan」
一色賢司氏 (北海道大学大学院水産科学研究院 安全管理保障科学分野 フードチェーン保全学領域 教授)日本は世界中から食品を輸入して多様な食生活を営んでいるが、食中毒はよくコントロールされている。これはコールドチェーンの発達や、水産物取り扱いの指導が行き届いていること、食品関係事業者の自主的な衛生管理などによる。
食品をより安全にするためには、温度管理等の「物理的な技術」、発酵させる等の「生物的な技術」、食品添加物等の「化学的な技術」を必要に応じて適切に組み合わせることが必要である。ライスナー博士が提唱したハードル理論によると、1つのハードルだと食品の色や味、香り等を犠牲にしなければ微生物対策ができない場合でも、沢山のハードルを使えば食品の品質を犠牲にせずに対策ができる。
ハードルとしては温度、水分活性、pH、食品添加物等がある。食品添加物は、消費者の健康を守るために使われるものであり、法律によりリスク分析が行われている。食品添加物を使わなかった場合の食中毒発生リスクや、そのリスクに起因する食品廃棄等の損失を考えて、総合的にリスクを判断することが必要。
食品安全リスクを管理するための、物理的手法・生物的手法・化学的手法を適切に組み合わせ、科学的なリスク管理を実施することが重要である。 -
Introduction
Dr. Werasit Sanpamongkolchai
(カセサート大学農産業学部バイオテクノロジー学科 准教授)
タイで新たに導入されたPL法においては、食中毒が起こったときに生産者が原因を分析把握しなくてはいけない。生産記録は、賞味期限プラス3年間保管しなければならなくなった。これまでも生産者はしっかりやっていたが、今後より厳しくなってくる。一色教授から説明があったように、食品安全の確保には様々な方法がある。その中でも特に食品添加物について、これから説明してもらう。
Application of pH Adjuster “KEEP LONG”
古川陽二郎
(ウエノタイ R&D Manager)
上野製薬は、長年にわたって日本の食品製造現場における衛生対策の簡便かつ効果的な技術を研究してきた。微生物を「ころす」「つけない・広げない」「増やさない」「監視する」トータルサニテーションの実践を進めている。
「増やさない」対策としては保存料を使うことが効果的だが、近年、タイの消費者は保存料を避ける傾向にある。そのため今回はpH調整剤「KEEP LONG」を提案紹介する。KEEP LONGは有機酸および有機酸塩の働きにより食品のpHを制御し、微生物の増殖を抑える効果がある。
またKEEP LONGではおいしさを損なわない工夫も施されている。食品によってはpHが低下することで、食感が劣化したり発酵が阻害されたりする。しかしKEEP LONGでは加熱前にpHを低下させないためそのようなことが起こらない。加熱により速やかに食品のpHを下げて効果を発揮する。
最後に、具体的な食品ごとの応用例と衛生対策のポイントを紹介する。質疑応答
会場からは、日本における食品添加物の表示や、カンピロバクターやノロウイルスによる食中毒、輸入食品の検査状況等について質問がありました。
洪水の影響も心配されたものの、当日は100名の参加をいただき盛会となりました。改めて食品企業ご担当者様の食品安全への意識の高さに敬服するとともに、ウエノタイの活動へのご理解、ご協力を賜り心から感謝申し上げます。今後もタイの食品業界の発展に貢献してまいりますので、よろしくお願いいたします。